まとめ
- 登録免許税は登記・登録で得られる利益を根拠に課税される。
- 登録免許税の税額は不動産の価額、債権額、資本金額などの0.1%~2%、又は、一定額で数千円~15万円がよく使われる。
- 登録免許税は個人でも法人でも損金算入可能が可能
登録免許税の概要
登録免許税は登記・登録で得られる利益を根拠に課税されます
登録免許税については、登録免許税法、同法施行令、同法施行規則、租税特別措置法、同法施行令、同法施行規則に定めがあります。
登録免許税法には基本的なルールが、記載されています。同法の別表に登記・登録の類型ごとの税率が規定されています。
登録免許税法施行令には登記官の職権登記の場合の非課税や認可事業の登録免許税の範囲や誤って納付した場合の還付などが規定されています。
登録免許税法施行規則には公益事業等の税の減免や電子納付の手続などが規定されています。
租税特別措置法・同施行令・同施行規則には、土地の売買による所有権の移転、住宅用家屋の所有権の保存・移転や抵当権の設定の場合の登録免許税の減免、各自治体による産業競争力強化のための登録免許税の減免などが規定されています。
ここまでの参考:内閣府税制調査会基礎資料、財務省登録免許税に関する資料、法務局令和2年4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ、国税庁登録免許税のあらまし、国税庁登録免許税の税額表、G-gov 法令検索
登録免許税の金額
登録免許税は登録・免許の種類毎に一定額か、登録・免許の種類毎に定められた課税標準に税率を乗じて計算します。例えば、不動産売買による所有権移転登記は不動産の価額に1.5%(租税特別措置法の特例による)、株式会社の設立の場合は資本金額に0.7%最低15万円(一定の要件で産業競争力強化のための登録免許税の減免で0.35%で最低7.5万円になる場合もあり)などです。
(例1)登録免許税=定額(人材派遣業の9万円・税理士登録の6万円など)
(例2)登録免許税=不動産の価額×1.5% ※売買による所有権移転の場合
課税標準は不動産の価額、債権額、資本金額、支店の数、移転する事業所の数、役員登記の申請件数など様々あります。上記のうち、不動産の価額以外は客観的にわかる金額だと思います。ただ不動産の価額って曖昧でよくわかりませんよね。具体的にどういった金額なのでしょうか。その金額はどうやって決まっているんでしょうか。
不動産の価額とは
登録免許税法でいう不動産の価額は固定資産税の課税標準額です。市町村に対し固定資産税の課税台帳の閲覧や評価証明書を交付を請求するか、不動産の所有者に毎年送られてくる課税明細書を入手することで知ることができます。
課税台帳の閲覧や評価証明書を入手できる人の範囲は、所有者本人・相続人・納税管理者(海外に住んでいる日本人などの代わりに納税の代理を行う税理士等)・本人から委任状の交付を受けた者、法人が不動産を所有する場合の法人代表者などです。
不動産の価額の決め方
原則として3年の一度、市町村が不動産鑑定士に依頼して評価を行います。例外として著しく評価額が変動するような場合には随時評価を行います。また、家屋の新築、増改築、取り壊し、建て替え、用途の変更の際に所有者の申告や登記所の通知により家屋の評価を行います。評価が誤っていると考える場合、本人やその税理士は審査を申し出ることも可能です。
では市町村は具体的にどのように計算して評価しているのでしょうか。
土地の評価額はまず、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地の地目別に地域毎地目毎の標準的な土地の実際に売買された価格(実勢価格)を参考に取引の個別的な要因を排除して公示価格(国が1月1日に算定し3月下旬に公表)、基準地価(都道府県が1月1日に算定し9月下旬に発表)を算定します。※公示地価と基準地価の算定主体は変わりますが、算定方法は同じなので同一のものととらえて問題ありません。
次に、公示地価と実勢価格を参考にして標準的な土地に対し、公示地価の8割を目安に国税庁が決定する相続税路線価、公示地価の7割を目安に市町村が決定する固定資産税路線価が決定されます。そして、各道路毎に街路の状況、公共施設等の接近状況、家屋の疎密度、その他宅地の利用上の便等を考慮して、各道路の相続税路線価、固定資産税路線価が決定されます。
そして、土地が面している道路の固定資産税路線価(例A道路に面している土地は正面路線価が10,000円/㎡)に奥行価格補正率(住宅地区で正面路線価に対する奥行が25m=0.97等)をかけ、同様に側方路線価を計算し側方路線影響率(0.08%等)掛けた金額を合計し1㎡あたりの評点数を出します。1㎡あたりの評点数に地積(正面25m×側方20m等)をかけて画地の評点数を計算します(5,000,000円→5,000,000点等)。
市町村は上記のようにして計算した地目の種類(宅地、田、山林等)ごとの評点数を合計した結果を都道府県に報告します。都道府県は合計した金額に都道府県間の評価の均衡を図るための一定の調整(×0.95する等)を行い、総評価見込額を計算します。次に、総評価見込額を地目の種類毎の合計地積で割って、提示平均価額が算定されます。その後、提示平均価額を地目の種類毎の合計評点数で割って評点1点あたりの価額を算定します。最後に評点1点あたりの価額に当該画地の評点数をかけて評価額を算出します。
長くなりましたが、土地の固定資産税評価額はざっくり言えば、実際の売買価格に地域毎の事情と評価する土地の性質を考慮したうえで、全国的な評価の均衡を図るよう調整して計算されます。
また、建物の固定資産税評価額は建物の屋根、基礎等の部分毎に設備を評点(いぶし瓦の和瓦で17,090点で腰折れ屋根でさらに×1.5倍の評点補正等)して計算するか、同一区分(構造程度規模から区分)の標準的な建物から施行資材施工量を加味して評点して計算し、計算した評点に損耗を加味して評価します。
ここまでの参考:総務省固定資産評価基準、資産評価システム研究センター平成30基準年度固定資産税評価のあらまし、東京都固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出について、長野県提示平均価額が評価額の算定に与える影響について、福岡市特定創業支援等事業のご案内、福岡市税務証明交付申請書等のダウンロードサービス、稲美町FAQ固定資産課税台帳の閲覧や証明は誰でもできますか?
登録免許税の経費算入
登録免許税を支払った場合は法人でも個人でも経費に算入することができます。
参考:国税庁タックスアンサーNo.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合、国税庁法令解釈通達租税公課37-5
公認会計士・税理士 上原英知