消費税の制度的欠陥

消費税は仕入れたものにかかる消費税と売り上げたものにかかる消費税の差額を収める方式で、簡易で恣意入る余地のない税金のようにも見えます。しかし、実際は違います。

消費税の概要

消費税は消費者に税金を負担させるタイプの税金です。消費税を申告し納入するのは、税金を負担する消費者ではなく、消費者に商品やサービスを提供した事業者です。例えば税込み110円の商品を売った場合は消費税率10%にあたる消費税10円は消費者が10円余分に払うという形で負担します。ここで、10円を納入するのは商品を売った事業者です。

非課税取引とは

消費税には非課税となる取引があります。たとえば介護や保育などの公共的事業や住居の賃貸業を営んでいる場合には、取引に消費税がかかりません。上記のような事業を営んでいる場合は、お客さんが消費税を負担しません。当然、事業者は納付する消費税はほとんどありません。

しかし、この事業のために購入した商品やサービスについては通常通り消費税がかかってきており、公共的事業者を行っている者は相手方事業者から見ると消費者であり、消費税を負担しています。

もっとも、一般的には、事業者の売上金額は、その売上のために購入した商品やサービスの金額を上回るので、納付する消費税がないというのは、ほとんどの場合非常に有利です。

仕入税額控除の2種類の選択余地

事業者は売り上げた商品にかかる消費税を納入しなければなりませんが、納入する消費税から、売上を作るために購入した商品やサービスにかかる消費税を控除することができます。この控除できる制度を仕入税額控除といいます。

仕入税額控除は個別対応方式と一括比例配分方式の2種類の方法があり、事業者任意に選択できます。

個別対応方式はざっくり言えば、①消費税が課税される売上を計上する事業のための商品やサービスの仕入れにかかった消費税②非課税の売上を計上する事業のための商品やサービスの仕入れにかかった消費税③ ①と②の両方の事業のための商品やサービスの仕入れにかかった消費税にわけ、③×(消費税が課税される売上)/(消費税が課税される売上+非課税の売上)と①の合計を売上にかかる消費税から控除する方法です。

一括比例配分方式は、ざっくり言えば、(全ての商品やサービスの仕入れにかかった消費税)×(消費税が課税される売上)/(消費税が課税される売上+非課税の売上)を消費税から控除する方法です。

※上記は輸出売上や返品・値引・割戻や有価証券債権等の譲渡がないものとします。

仕入税額控除の計算上の不備と介入余地

仕入税額控除の算定式のうち(消費税が課税される売上)/(消費税が課税される売上+非課税の売上)を課税売上割合といいますが、この割合は操作する余地があります。たとえば、売るときと買うときでほとんど値段が変わらないようなものを事業として大量に取引をしたとします。この取引は消費税が課税される売上になります。そうすると課税売上割合は増加します。消費税が課税される売上が5億に満たない場合に課税売上割合が95%以上になると、課税売上割合割合は100%とみなされます。

例として年間2000万の住居向けの賃貸収入(非課税売上)のみがある事業者を想定しましょう。そして、値段の変わらない貴金属のトレードを反復継続的におこない、税抜き4億円税込み4億4000万の売上を計上したとしましょう

その場合、課税売上割合は4億/(4億+2000万)=95.23・・・(%)となります。課税売上割合は5億円を超えていないので課税売上割合は100%とみなされます。

この事業者がこの事業年度に、50区画に各々税込880万円の格安一軒家をローンで建てたとしましょう。課税売上のための仕入ではないため、貴金属のトレードをしていなければ、消費税4000万円(80万×50)を控除することはできませんが、この事業年度は貴金属のトレードにより課税売上割合は100%とみなされているため、4000万全額を控除することができます。そうすると非課税の売上にかかる納付すべき消費税は0であり、貴金属のトレードにかかる消費税は売上と仕入で損益がでていなければ相殺されるので0円なので、結果としてこの事業年度では4000万円消費税が還付されることになります。また、この格安一軒家の賃貸収入は住居に係る賃貸収入なので、非課税になります。よって、仕入れの際の消費税は控除できる一方、売上には消費税がかからないことになります。したがって、一切の消費税がかからない取引が可能になってしまいます。

2020年10月施行の消費税の税制改正

上述の消費税を還付する方法は、還付スキームなどと呼ばれ有名になり、メガ大家と呼ばれる不動産を大量に保有している者はほとんどが使っていたと思われます。さらにかつては課税事業者から免税事業者に戻ることができる制度を利用して、仕入の際は税額控除を使う一方、建物の売却時には免税となることで不正に消費税を国からもらうことで儲ける人もいました。

2020年10月施行の税制の改正により、一物件につき1000万以上の居住用の建物については仕入税額控除ができないことになりました。もっとも、手間がかかるので現実的ではないかもしれませんが、一物件につき(正確には一つの取引につき)1000万未満であれば、還付スキームが使えます。

このように消費税には制度上の問題があるということ、一見節税の介入の余地がないような消費税においてもやり方によって税金が変わるということをお伝えできたなら幸いです。

公認会計士・税理士 上原英知

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